シバタ商店 ロゴ
東京堤燈業組合設立名簿
明治後期、上野駅前下谷車坂
柴田和重郎
(初代)が柴田商店を開店する。

柴田和重郎の元、修行していた
和重郎の長女秋子と結婚
家業に従事する、

柴田計が文京区千駄木に柴田商店を開店
昭和36年隣接町・根津(現在地)に移転
現在に至る
柴田商店のご紹介
製作工程の写真 (中太・塗りこみ)

手書きの味で江戸の風情残す
江戸提灯 柴田慶一さん
東京新聞名流の記事より(1998・8・22)

東京・文京区根津、不忍通りの商店街。店先に並ぶ大小色とりどりの提灯(ちょうちん)が下町情緒を醸し出す。
 この江戸提灯を作り続ける柴田商店の柴田慶一さん(43)は三代目。祖父が現在の上野駅前の提灯屋(現在は無い)、柴田商店に住み込み職人として勤め、昭和初期に、この店の娘と結婚して千駄木 に店を構えた。
 「昔は一町に一軒の提灯屋があったそうだが、今では東京に約五十軒ほど」という。柴田さんは最初、グラフィックデザインを学び 、デザインの仕事をしながら家業を手伝っていた。その後、伝統ある江戸提灯の技術を継ごうと提灯職人に専念。平成三年に結成された 文京区伝統工芸会会員。

 江戸提灯は早くから分業化が進み、職人の重要な手仕事は文字を書くこと。岐阜や水戸から白張り(竹ひごに和紙を張った状態)で仕入れて、「文字のおさまり」を重視する。
 画材用の木炭で文字のアタリをつけ、筆で文字の枠取りをして(籠字とも言う)枠内を筆やハケで塗る。文字が乾いたら、提灯の上下 に飾りとなる重化(じゅうけ)、手に持つ部分に籐(とう)を巻く。 和紙がきちっとたためるように折り目を付け、温めた油(亜麻仁油)を薄くひいて乾燥させる。
 
「提灯文字に定形と言われるような決まりはない。文字と絵柄のバランスが大事」で、書く人の技術とセンスがものをいう。祭り、店 の看板、神社仏閣の奉納提灯など、イベントを盛り上げる小道具として注文が多い。弓張り提灯8千5百円、高張り提灯1万8千円。「実用品でなくなっただけに、手書きの味で江戸の風情を残したい 」と柴田さんは話している。
 十月十一日から谷中墓地五重塔跡周辺で開催される「下町まつり 」(文京区・台東区共催)には、文京区不忍通りふれあい館で伝統 工芸の実演も行われる。







文京ふるさと歴史館 平成9年6月初版発行
江戸提灯
職人としての生活

***系譜と修業***
 岐阜から出てきて上野で提灯屋をしていた柴田商店に、住み込みの職人 として勤めていた柴田氏の祖父は、柴田商店の娘と結婚して、昭和の初め 頃、柴田商店の名前を分けてもらって千駄木に店を構えた。柴田氏の父も 提灯職人をしており、柴田氏で三代目にあたる。(柴田商店としては4代目)  柴田氏は、デザイン学校で学んだあと、家業の手伝いをしながらデザイン の仕事をしていたが、今は、伝統ある江戸提灯の技術を受け継ぐべく、提灯 職人として仕事をしている。

***日常生活と提灯***
以前は町内に必ず提灯屋が一軒はあったというくらい、提灯は人々の生活 に密着したものであった。かつては年の瀬になると、商店の店先に屋号が 書かれた新調したばかりの高張提灯がかけられた。これは正月の準備で忙 しくなる時期にあわせて店が宣伝のためにかけたもので、提灯は夜間の照 明ばかりでなく店の看板としての役割も呆たしていたという。また、提灯屋は 和傘も扱っており、戦前は蕎麦屋や旅館からの注文が多かったという。

***組合と行事***
 現在、組合の加入者は問屋などを含めて50軒くらいである。年に数回の集 まりがあり、値段の取り決めなどをするほか、親睦を兼ね、た旅行なども行 われている。組合の若い職人さんたちで提灯研究会も作られており、先輩 職人の文字を学んだり、神社の奉納額や千社札や石碑などの文字を見に出 かけるなどしている。奉納額などの文字は名人といわれた提灯職人が書い たものが多いため、提灯の文字とは基本的には異なるが、参考になる部分 が多いのである。
 また組合の行事として、毎年1月末から4月初めにかけて筆供養が行われ ている。これは、提灯職人にとって重要な道具である筆に対して感謝の意味 を込めて供養をするものであり、湯島天神(東京都文京区湯島三丁目)で打 われている。

●技術・工程*道具

***提灯文字***
 江戸提灯は早くから分業化が進み、職人の重要な仕事は文字を書くことで ある。「文字には定型と言われるような決まりはなく、職人によって書く文字 は異なる。職人が共通の意識として重視するのは「文字のおさまり」である。 ただ、文字のおさめ方も職人によって異なる。おさめ方の例としては、「田と か神」という文字の場合、つくりの部分の「申」の中央の横画を菱形にするこ とによって文字のおさまりをつけるなどがある。(視覚的な安定感を求める)

***工程と道具***
 江戸提灯職人は、茨城県水戸市や岐阜県岐阜市から和紙を張った状態で 送られてきた提灯に文字を書いていく。
 まず、モクタン(木炭)で文字の配置やバランスを考えてアタリをつけていく 。これは文字の下書きのようなものである。
 次に、アタりを参考にして、面相という細い筆で文字の枠をとっていく。 こ れをスガキ(素書き)という。文字を書くときには、提灯の表面の凹凸をなくす ために、内側にハリダケ(張り竹)を当てて表面を上下に仲ばした状態で書 いていく。
 素書きが終わったら、丸筆や平筆(ヒラフデ)や刷毛で文字の中を塗ってく 。最後に文字のはねる部分や角の部分などに什上げの装飾をして文字は完 成する。
 家紋などを書く場合には、ブンマワシというコンパスのような道具を使い円 を描いていくつブンマワシは竹を裂いて作る道具で、職人が自分の使いやす ように工夫するものである。
 文字が乾いたら、ジウケ(重化)という捉灯の上下の飾りや手で持つ部分 を取り付ける。付け終わったら提灯の表面の祈り目が竹ひごの内に出るよ うにもう一度たたみ、最後に亜麻仁油という油をく。これは提灯の耐久性を 高めるためのもので、油の仲びをよくするために温めてからなるべく薄くひく 。厚くひくと表面が酸化して茶色く変色し、痛みやくなってしまう。また、大き な提灯(奉納提灯等の場合)油をひかずにに卵の白身を何度も塗り、文字に 艶を出すということもするという。